えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

自己流言葉の訓練

夫は脳出血の後遺症で言葉が話せません。約6ヶ月の入院期間中には単語の発語さえできませんでした。今は「お」と「な」と「ん」だけは言えるようになったけれど、ただそれだけです。

何か言おうとしても「おんなんなんなん・・・」ばかりです。それでも、本人は語気を変えて話しているので、言おうとする内容は違うのです。

回復期リハビリ病院を退院する時に、主治医から「言葉の回復は難しいです。一般的には、2年経つとそれ以上の回復はまずないでしょう」と言われました。夫はその2年を越えてしまいました。

本当は退院後もST(言語聴覚士)の訓練を受けたかったけれど、STの数は少ないのですよね。以前は回復期リハビリ病院でも外来患者のリハビリを行っていたけれど、リハビリの職員が同時に何人も退職したため、新規外来患者の受け入れを中止したのです。入院患者だけで手いっぱいになってしまったということで。

介護保険で利用できる施設ではSTが常駐しているところは市内に1か所だけしかありません。しかもその施設は我家から一番遠い所だったので、受け入れてもらえませんでした。もう1か所、臨時で月2回だけSTの訓練が受けられるというデイサービスがあったけれど、そこは他の面で諦めることにしたのです。

そんなわけで、夫は言葉が話せなくても専門家の言語訓練を受けることができません。

だからといって、夫の言語の回復を諦めてしまったわけではないのですよ。2年経ったからって、専門家の訓練ができないからって、そうそう簡単にあきらめるわけにはいかないのですから・・・

それでえむこが常々心がけていることは、とにかく顔を見て話しかけること。朝起きたら「お・は・よ・う」と口の動きを見せてはっきりとした口調で話す。夜はベッドに入ったら同じように「お・や・す・み」と。時々は鏡の前に並んで「あ・い・う・え・お」なんて、口の動きを真似するように訓練することもあるけれど・・・

それと、夫といる時には挨拶だけではなく、とにかくしゃべること。時にはジェスチャーを交えたり、着替えの時には「まず右腕を通して・・・」と方法を話しながらやってあげるとか。

あとは言葉に関係あるのかないのか分からないけど、とにかく笑わせること。明るく、楽しくなるように・・・

でも、今のところ言葉の方は相変わらず「おんなんなんなん・・・」だけなんだけど。

夫は失語症以外にもたくさんの高次脳機能障害があります。夫のような場合、失ってしまった知識や行動、言葉を再度学習することで獲得していきます。物を見てもそれが何なのか、どうやって使うものなのかも初めは分からなくなってしまっていたのです。それを一つ一つ再度学習することでお茶碗、箸、ノート、鉛筆がわかり、その使い方も分かるようになったのです。だから、いろんな経験をした方がいいと思っています。

それにはえむこだけでなく、いろんな人と接することも必要になってきます。それがいろんな意味での回復につながると思うから・・・

それで今日は珍しく散歩に出かけると言い出した夫と、ご近所に住む夫の先輩のところに寄ってきました。

先輩夫婦は自営業なので大体は家で仕事をしています。実は先週夫がデイケアの日に我家に来てくれたので、散歩の途中で「寄ってみよう」と誘ってみたのです。

久しぶりに会った先輩のご夫婦から「いい表情になったね~」と言われ「言葉は話せなくても私たちの話すことは分かってくれているのがよく分かるよ・・・」とも。そして「随分、良くなってきたみたいだね」と言われ、嬉しくなって帰ってきたのです。

毎日いっぱい話すこと。そして笑わせること。そんな些細なことだけど、続けているといいのかも・・・

 

今日は庭で牡丹が咲き始めました。

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この花はお隣のおじさんから15年以上前にいただいたもの。

おじさんは亡くなってしまったけれど、毎年きれいな花を見せてくれます。

今日もこの花を見ながら、夫とおじさんのことを話していたのです。

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全部で8個ぐらいは咲きそうかな。