えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

去って行った友人

脳出血の後遺症で失語症になった夫は全く会話をすることができない。何を言うのも「おんなん・なん・なん・・・」だけ。

それでも、表情はだいぶ豊かになり、久しぶりに会う人は驚いている。そして、人の話は90%ぐらいは理解できているように感じる。私が感じるだけで、言葉を発することができないので本当の所は分からないけれど。

そんな夫の所にも訪ねてくれる友人や先輩が何人かいる。

今日も親しかった先輩Kさんが来てくれた。夫より4歳年上のKさんは今年度で事務所をたたむつもりらしい。それで、本を整理していると言い、美術関係の本は「見たら処分してもいいからね」と言い、夫の所に持ってきてくれた。

夫はKさんと建物の好みが似ていた。そして、考え方や他の趣味にも共通するものがあったように思う。

だから、Kさんが来てくれると、いつもにこにこしながら、私とKさんが話す建物の話、絵の話、本の話、等など・・・頷きながら一緒に話しているような気がしていた。もちろん、今日も。

 

そして、この間の日曜日には小学1年生からの友人Kちゃんが来てくれた。

Kちゃんは多分、夫が一番気が許せる友人だと私は思っている。Kちゃんは酒飲みだけど、最近はいつも甘いものを持ってきてくれる。この間も花見団子と草団子を持ってきてくれた。

お団子を食べながら話すことは、主に昔話と子どもたちのこと。我家の長男と、彼の双子の娘さんは同級生。我家の二男と、彼の長男も同級生だから。それに、私たちは3人とも中学の同級生でもあるのです。

だから、こちらも話す内容は何気ない日常のことばかり。だけど、夫ととってはそれも嬉しいことなのでしょう。いつだってにこにこしているのですから。

だけど、去年の9月を最後にそれ以来来なくなった友人がいるのです。彼も小学校からの友人で、夫は親友だと言っていたT君。

これは去年、T君のことを書いた記事。

http://emukobb.hatenablog.com/entries/2012/09/22

T君は去年の9月に我家に来てくれた時、夫の態度が「うっとおしいと思っているみたいだった」と言うのです。私には「え~!!」って感じ。「いつもと変わりなかったと思うし、そんなことはないと思うよ」と言ったけれど、そう感じてしまったT君には通じません。「しばらく間にしようかと思っている」と言われれば、夫にも私にも、もう反論の余地はありません。言葉や態度は受け手がどういう風に感じるかであって、決めるのは相手方なのだから。

私としては夫の大事な友人。精一杯のおもてなしをし、精一杯気を使ったつもりなんだけれど。

我家のテーブルにはT君が夫のために作ってくれたCDが積んである。だから、毎日のようにT君のことを思い出すけれど、彼は私の友人ではなく夫の友人。話すことができない夫は弁明もできない。かと言って私にはどうしようもないこと。

夫に対して嫌な気分で来なくなったK君に対し、夫が最近描いた絵手紙でも出せば彼の気持ちも変わるかもしれないと思いながらも、やっぱり「去る者は追わず」としか思えないでいるのです。

人の気持ちはこちらではどうしようもないことだから・・・

夫のことを思い、会話ができなくなった今も来てくれる友人や先輩たちには言葉に表せない程感謝している。T君にも同じ気持ちでいるけれど、今はT君が夫に会いたいと思い、こちらの気持ちが伝わるまでじっと待つしかないのでしょう。彼がそう思うことがなければ、それはそれで仕方がないことだと思いながら。