えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

人のせいにしないで

昨日、探していた新聞記事は見つからなかったけれど、途中で他の記事に目が留まった。

 

勤めていた頃は、出勤前に大雑把でも新聞に目を通していた。特に医療関係の記事は読んでから出かけた。看護師に関係がある医療事故の記事を読めば、朝の申し送りでスタッフに注意を促すためであり、治療や看護に関わることは患者さんも読んでいることが多く「〇〇のことが出ていたね」と話しかけられたり、聴かれることがあるから。

今はもう看護師として勤務しているわけではないけれど、それでも医療・看護に関する記事はまず読んでいる。

 

それで、目に留まった記事は医療のページ「1分で知る豆医学」というコラム『血管1 注射、太い静脈に』という記事。

以下引用 

昨年、骨折で入院した。めいったのは、日々の注射だった。鎮痛剤用に点滴の針を常時、腕につないだ状態にして、数日に1回、針を刺し換える。回を重ねると刺す場所がなくなって来る。血管がなかなか見つからないと、看護師さんはやり直す。これが痛い。・・・・・・

・・・・・・「安全な静脈注射には、動脈や神経に近い場所を避けて、太い静脈を選ぶことが大事」・・・ ・・・看護師さんの経験が浅いと、表面に見える静脈を選びがちだが、浅い位置にあるから太く見えるだけで、実際は細いことが多いという。

・・・・・・うまい看護師さんは・・・ ・・・奥にある太い静脈を見つけ出す。1㍉、2㍉単位で太さの違いを感じ取るというからすごい。

というもの。

回を重ねると刺す場所がなくなる。刺し直すと痛い。その通りなのだ。状態が悪い患者さんの場合は、いくらベテランであっても、血管が出なくて四苦八苦し、何度も刺し直しさせてもらうことがある。

 

夫が入院中、ICUを出て脳外科病棟の個室に移動したばかりの頃だったと思う。持続点滴が漏れてしまったようで、それを刺し直すために何人もの看護師が次々に夫の病室に来た。

初めの看護師が入らず、次の看護師も、次も・・・ それで、やっと入った。あんまり入らないから、自分で刺したいと思ったけれど、そういうわけにはいかない。だから「多分、夫の状態が悪くて血管が出ないのだろう」と、拳を握りしめ、じっと我慢して見ていた。

点滴が入ってから、1人の看護師が「ご主人は血圧が高い方ですか?」と私に聞いた。見た目、20代後半か30代の中堅の看護師のようだった。私が「はい。高血圧でした」と答えると「そうでしょうね。血圧が高い人の血管はガチガチになっていて、点滴が入りにくいから」と言ったのだ。もちろん、私が看護師だとは知らずに言った言葉。

夫のせい? 夫が悪いの??

その言葉を聞いて「そんなこと、患者や家族に言う言葉か!」と、ものすごく腹が立ってきた。でも、何も言えずにその場は我慢した。だけど、私から言わせれば、入らなかった看護師の自己弁護の言葉であり、言い訳にしか聞こえなかった。

 

私が勤めていた時も、点滴が入らず苦労した患者さんが何人もいる。病院として、スタッフには2度失敗したら変わるように指導していた。新人には無理そうだと思ったら、1回でも変わるようにと。

私は年長の方だったから、変わってほしいと依頼されるときは最後のほうで、3人目、4人目の時もあった。先に何度も針を刺した後で刺すのは至難の業だ。いい血管はことごとく刺した後だから。でも、入った後にそんな言葉を放ったことは一度もない。「痛い思いをさせて申し訳なかったですね」とか「入りましたからもう大丈夫ですよ。ごめんなさいね」とか・・・ とにかく痛い思いをさせてしまったことをお詫びしていた。

患者は何度刺されても、必要ならば我慢する。多分、みんな我慢すると思う。だから、いくら状態が悪くて血管に入らなくても患者のせいにはしないでほしい。状態が悪いから患者であって、点滴が必要なのだから。

あの時、心の中で「プロなら患者のせいにしたり、言い訳の言葉を言うのではなく、技術を磨いてほしい。看護師という資格があるから、患者さんに針を刺すことができるのであって、資格がなければ傷害罪なのだから・・・」と思ったこと。この記事を読んで思い出していた。