えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

まんじゅうと父

今週のお題「あまいもの」

父はお酒が好きな人だった。アルコールなら何でも飲んだけれど、一番好きだったのは日本酒だ。

自営業だった両親は夕方仕事を終えると、母は晩ごはんの準備を始め、父はその傍らでもう晩酌を始めていた。

いつもは晩ごはんのおかずをつまみにちびちびやっているのだけれど、時としてまんじゅうを片手にお酒を飲んでいることがあった。

私がそれに初めて気づいた時「えっ!! まんじゅうでお酒を飲んでるの?」と言うと、母は涼しい顔で「お父さんはおまんじゅうでもお酒が飲める人なのよ」と言ったのだ。

子どもの頃から私はどちらかというとせんべい党。決して甘いものが嫌いという訳ではないけれど、おまんじゅうがあっても手を出すことはあまりなかった。多分、兄や弟も同じだったと思う。だから、父がそれを片手にお酒を飲んでいる姿に驚いたのだ。

そんなことがあって、私は父が和菓子も好きだということに気づいた。お酒を飲んでいる時もごきげんがいい父だったけれど、和菓子を食べている時の父もとっても嬉しそうな顔をしていたから。

それで、私は働くようになってから、給料日になると和菓子を買って帰るようになった。

親が子どもの喜ぶ顔が見たくて子どもの好きなものを作ったり買ったりするように、私は父の喜ぶ顔が見たくて和菓子を買って帰っていたのだと思う。

もちろん、何時だって父は喜んでくれたし、おいしそうに食べてもくれた。

だから、私にとって甘いものというと和菓子であり、それをおいしそうに食べながらお酒を飲んでいる父の姿が思い出されるのだ。

父が亡くなってからはもう和菓子を買うことは殆どなくなった。

だけど、今週のお題を見てから「たまには父が好きだった和菓子を買ってこようかな」と思っているのだ。