えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

切ない現実

国民すべてが公的医療保険に強制加入するという、国民皆保険体制が整えられたのが1961年のこと。それからもう50年以上が経つ。

 

私が看護学校の頃、人工透析はまだ保険適用外だった。透析を一回受けると200万円ぐらいかかり、田畑を売り払って受けている人がいると聞いたことがある。それができなかった人たちは死んでしまったのだろうか。

 

母が胃がんで倒れ、胃全摘手術を受けたのが約40年前。当時はまだ高額医療制度はなく、手術した月の入院費は確か10万円以上だったと記憶している。でも、医療保険があったから手術が受けられたわけで、もっと昔なら手術などうけることもできずに死んでいたのかもしれない。

 

夫が倒れて緊急手術を受けたのは30日までの月の29日のことだった。

入院費は月末でしめて10日頃の請求になる。夫の時にはもちろん医療費が高額になれば、自己負担限度額以上の金額は払い戻しが受けられる制度ができていた。事前に健康保険組合に「限度額適用認定書」を申請し、発行してもらった認定書を医療機関に提出すれば、払い戻しでなく、初めから限度額だけを支払えばいいことになっていた。

夫は緊急入院、緊急手術だったので医療機関からの口頭での説明はなかったけれど、入院案内にはそれが書いてあった。まあ、書いてなくても私は患者さんに説明する立場だったので知ってはいたけれど。

夫は国保に加入していたので、30日に市役所が開いてから、その手続きに行った。だから、請求された2日分の入院費は100万円をかなり超えた金額だったけれど、自己負担限度額だけを支払えばよかった。

 

私の実家は自営業だったので、母も国保だった。当時、いくら位の保険料だったのかは知らないけれど、大変だという言葉を聞いたことがある。だけど、高度成長期のこと。頑張って支払っていたのだろうし、支払うことができたのだと思う。

夫も自営業だったけれど、収益が少なかったので収益を上げている人に比べれば保険料はかなり少ない額だったと思う。

それでも、支払いは大変だった。だけど、そのおかげで助けられたと思っている。

 

それが今、国保の保険料が払えず滞納する人が増えていると聞く。

その滞納者に対して市区町村が預貯金や給料などを差し押さえて強制的に滞納分を支払わせているという。

そんな記事が今日の朝刊に載っていた。

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記事によると、

・・・建設作業員(58歳)は2月の給料が約8万円しかなかった。約15万円の手取りから国保の保険料が引かれたからだ。家賃などを支払えば、手元に2万円しか残らない。

・・・保険料の滞納額が30万円になったのを機に市から給料を差し押さえられ、・・・月約7万円が強制的に引き落とされるようになった。・・・

国保の加入者は自営業で収益がある人もいるけれど、高齢者などの無職と非正規労働者が8割いるという。そして、年間所得が100万円未満の世帯が半分を占めるそうだ。だから、ほんとに支払えない人も多いと思う。

かといって、正規の会社員は給料から強制的に天引きされているし・・・

 

国民皆保険制度はすごい制度だと思っている。

でも、医療保険制度が破綻しそうな現実。

我家も国保の保険料は支払っている。だけど、収入が少ない我家では保険料の額よりもその恩恵にあずかることの方が多いぐらい。

今日、この新聞記事を読んでから滞納せざるを得ない人たちのことが頭を離れない。

保険料が支払えなければ保険証は発行されないと思う。そうすると、病気になっても医療を受けることもできないのだ。もちろん、自費でなら医療は受けられる。だけど、保険料が支払えないのだから、自費での医療など受けることができるわけがない。

だけど私にはなすすべもない。そんなことを考えていたら何だか切なくなってしまった。