小学生の頃、理科の授業でフナの解剖をしたことがある。
私が一人でしたという訳ではなく、5~6人が一つの班になり、その班ごとに行ったのだ。
たぶん、多くの女子は手を下さなかったと思うけれど、見ているだけで青ざめ、その場にうずくまってしまう女子が何人もいた。だけど私は大丈夫で、先頭をきって解剖を進める男子の手元を凝視していた。
当時、家の近くは男子ばかりで、私はそんな中で遊んでいた。
男子たちは昆虫を捕まえに野山を駆け回り、私も一緒に駆けずり回っていた。
時にはカエルを捕まえて、その皮を剥ぎ、ザリガニ釣りに興じた。私は自分から手を下すことはなかったけれど、そんな場面を見ていても平気だった。
中学に入り、そんな遊びをすることがなくなってからだろうか、だんだん虫が怖くなってきたのは。
それでも、結婚した当時は飛び跳ねている魚でなければ、魚は下ろすことができた。
大きな鰹であっても舞阪漁港まで買いに行って下していたぐらいだから。
それが今では昆虫は怖くてたまらないし、魚も目を見ると下せなくなってしまったのだ。
夫が倒れる前は、虫が出ると大騒ぎし、退治は夫に任せていた。
そして、魚は切り身にしてあるものを買うようになった。
先週の3月6日は啓蟄だった。
毎年、啓蟄と聞くと、そろそろ虫対策をしなくてはと思う。
去年は啓蟄より前の3月初めに、家の中で小さなムカデを 見つけた。
それから大慌てで家の周りにムカデの侵入防止剤を噴霧した記憶がある。
今年は、3月初めの頃に一時暖かい日が続いた。
その時、犬走りのコンクリートの小さなすき間からたくさんの蟻が出てくるのを見つけた。だけど、家の中に入り込んでくるわけではなかったのでそのまま様子をみていた。
そして、啓蟄頃はものすごく寒く、雪が降る日もあった。
だから「まだ大丈夫だろう」と思い、安心していた。
ところが今日、夫が何かを指さし「お~、お~、お~」と声をあげていた。
指の先を見ると、そこにはダンゴ虫が1匹転がっていたのだ。
ダンゴ虫は怖くはないけれど、汚い。
そして、ダンゴ虫が家の中に入ってくると、いつも次はムカデの番になるのだ。
「凍殺ジェット」という、瞬間に冷凍して退治するスプレーは準備してある。
だけど、虫だってほんとは殺したくないのだ。
ダンゴ虫なら箒で塵取りに入れ、庭に放り出すだけなんだけれど、ムカデではそういうわけにはいかない。
最近は蟻でもムカデでもゴキブリだって、退治するといろんなことを想像してしまう。
人間のような心があるわけではないと分かっていても、親は、子は、兄弟は・・・と。
そして、金子みすゝさんの大漁という詩を思い出してしまうのだ。
大漁
朝やけ小やけだ
大漁だ
大ばいわしの
大漁だ
はまは祭りの
ようだけど
海のなかでは
何万の
いわしのとむらい
するだろう
今晩はムカデがでないことを願って寝ることにする。
そして、明日は絶対に家の周り全てにムカデの侵入防止剤を撒こうと思う。
家の中に虫が入り込んで退治しなくて済むように。