えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

ひげそりの研究中

一ヶ月ぐらい前から夫は急に電気カミソリを嫌がるようになった。

それまでは朝に夕に電気カミソリを使って自分で髭剃りをしていたのに。

そうそう髭が濃いわけではないけれど、それでも1日髭剃りをしないと鼻の下やあごの辺りがごま塩状態になってしまう。

髭剃りするように促し、電気カミソリを渡してもダメ。

それでは私がやろうと電気カミソリを顔に当てようとすると手で振り払って嫌がるのだ。

理由を聞いても、失語症の夫は「おんなん・なん・なん・・・」と言いながら、左手でダメだという仕草をするだけ。

とはいえ、そのまま伸び放題にするわけにはいかないので「じゃあ、カミソリで剃る?」と聞いてみると頷いたのだ。

 

倒れる前の夫は、電気カミソリと替え刃式のカミソリを時に合わせて併用していた。

だけど、倒れてからは電気カミソリを使っている。

 

回復期リハビリ病院に入院中、病院のスタッフから「T字カミソリを持ってきてくれればお風呂の時に髭を剃りますよ」と言われ、T字カミソリを持って行ったことがある。

ところがその当日、お風呂で夫にT字カミソリを持たせたところ顔をスパッと切ってしまったというのだ。

普通、T字カミソリで顔を切ることはないのだけれど、高次脳機能障害の夫はカミソリの使い方も忘れ、横に動かしたのだと思う。

それ以来、風呂の時に夫にカミソリを使わせることも、それを使ってスタッフが髭剃りをしてくれることもなかった。

 

私は看護師だったので、仕事上で患者さんにカミソリを使うことがあった。

外科病棟に勤務していた時には、手術前日に剃毛といって患者さんの体毛を剃っていた。

今では剃毛をしない方が手術部位の感染が少ないと言われるようになり、ほとんどしなくなったけれど、当時は日勤の日には毎日のように行っていた。

それも使い捨ての一枚刃のカミソリを使って。

髭剃りも、寝たきりの患者さんや亡くなられた患者さんに行っていた。

電気カミソリを持っている患者さんにはそれを使うのだけれど、持っていない患者さんにはやっぱり使い捨てのカミソリを使って。

途中からはT字カミソリも使えるようにはなったけれど、40代の頃まではいつも使い捨て一枚刃のものだった。

 

ただ、当時の私はカミソリを使うことが苦手だった。

患者さんを傷つけないようにと、全神経を集中させてするのだけれど、それでも時々スパッと傷つけてしまうことがあったのだ。

 

だから、カミソリはできれば使いたくないと思っていた。

 だけど右手が使えない夫は左手でカミソリを持つことができても、皮膚を緊張させることができない。それに、また傷を負わせるわけにはいかないと思うと、苦手だからという訳にはいかないのだ。

で、ここ1ヶ月ぐらいT字カミソリを使って夫のひげそりを行っている。

時々、ヒヤッとすることがあるけれど、今のところ傷つけることはない。

蒸しタオルで髭を和らげ、石鹸を使ってみたり、シェービングクリームを使ってみたり、刃を髭の向きに沿って当ててみたり、逆剃りをしてみたり、刃をあっちに向け、こっちに向け・・・

目下、きれいに剃れるように研究中なのだ。

カミソリ自体も検討の余地ありと思っているけれど・・・