えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

100点じゃなくても

最近の夫は相手の言葉を90%ぐらいは理解できていると思っていた。文章に関してもだ。

それがこの間、診断書を書いてもらうためST(言語聴覚士)の評価を受けた時、まさかと思うほど分かっていなかったのだ。

STがりんごの絵が描いてあるカードと牛の絵のカードを並べ「りんごはどちらですか?」聞いた。すると、夫はその質問に対し牛の絵カードを指さしたのだ。他の絵カードに変えて同じように質問しても間違い、正解したのは3回に1回ぐらいだった。カードを3枚にした時も同じで、質問を口頭ではなく漢字やひらがなの字カードを見せて質問しても正解率は変わらなかった。

それで私は少しばかり落ち込んでしまった。

夫が回復期リハビリ病院を退院する時、主治医は「言語の回復が一番難しく、2年を経過すると回復の見込みはないと言われています」と言った。だけど、私は諦められず、退院後はそこの病院での外来リハを希望した。そうすればPT(理学療法士)やOT(作業療法士)の訓練だけでなく、STの訓練も受けることができると思ったからだ。だけどその時、リハビリ職員が同時に何人も退職したこともあり、新規の外来リハ患者は受け入れないことになったのだ。

デイケアにしてもデイサービスにしても常勤のSTがいる施設はほとんどない。市内で1か所だけSTがいるデイサービスが見つかったのだけれど、そこは我家から一番遠い施設だった。で、対象外区域との理由で断られてしまったのだ。もちろん、急性期病院や他の回復期リハビリ病院にはいるけれど、そこで受け入れてもらうことはまず難しい。それで夫は退院後、言語訓練を受けることができなかったのだ。

 

午前中、私が掃除や洗濯をしている間、夫はいつも新聞や本を読んでいる。それも眺めているだけで理解できていなかったのだろうか。

いや、そんなことはないはずだ。

甲子園の春の大会の時、地元の高校がサヨナラ勝ちした記事を指さして私に教えたことがある。それにこの間、閉じてあった市の広報を開き『安野光雅旅の絵本」の世界展』という記事を指さし「おー、おー」と声を出して私に教えたのだから。

 

STの訓練では3割ぐらいしか理解できていないという結果だった。と思う。テストだとしたら30点か・・・

だけど、今はそれでもいいじゃないかと思い始めた。カードの絵が何なのか分からなくても、字と結びつかなくてもいい。

実際の生活で「私が話すことを夫は分かっている」と、私自身が感じることができるのならば、それだけで十分ではないかと思うようになった。