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えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

雨もトイレも駐車場も心配

15年ぐらい前、通勤途上で時々電動車いすに乗った女性とすれ違った。すれ違ったと言っても私の方は車なので、時々見かけたというだけなのだけれど。おそらく、お互い同じ時間に家を出るのだろう、いつも同じ辺りで出会うのだ。

私は彼女のことを「電動車いすに乗った女性」ということ以外、何も知らない。ただ職場に近いところで会うので、その近くに住んでいるのだろうと想像していた。そして、暑い夏の日も、ものすごく冷たい風が吹きつける寒い冬の日も、土砂降りの雨の日にも出会うものだから「どこに出かけるのだろう・・・」と、何となく気にかかっていた。

 

ある大雨の日、職場のスタッフに合羽を着て電動車いすを運転していた彼女のことを話したことがある。職場のスタッフはその彼女のことを知っているようで「あの人は週に何日か仕事に行っているみたいだよ」と教えてくれた。だけど、スタッフもそれ以上のことは知らないのか何も話さなかったし、私も聞くことをしなかった。

それからはすれ違うたび「行ってらっしゃい」と、心の中で呟くようになった。穏やかな気候の時には「行ってらっしゃい」だけだけれど、北風が吹きつける時には防寒着を着ていても寒そうで「風邪をひかないようにね」と呟き、大雨の日には「車に気をつけてね」と呟いていた。

 

夫が車いすの生活になった今、当時すれ違った電動車いすの女性のことを時々思い出す。

 

夫と出かける予定がある時、私は1週間ぐらい前からお天気が気になり始める。そして、いつもネットで週間天気予報を見ている。前後に雨の予報がないときにはいいのだけれど、少しでも雨が降りそうな日があると心配でならない。そして、出かける日が「もしも雨だったら・・・」と、その日のシュミレーションを始めるのだ。

もちろん、どうしてもの用事でない限り外出は諦めてしまうし、お天気の予測ができない泊まりの旅行などはよっぽどでない限り計画すらできないでいる。

 

先週、歯医者さんの予約日は雨の予報だった。そして、予報通り雨が降った。

雨は大したことはなかったけれど、私は予約を伸ばしてもらおうと思った。だけど、夫は受診したいと意思表示をするのだ。私は一応「雨が降ったら屋根のあるところに車を止めて、こうして、ああして・・・」と、夫がデイケアに行った日に下見を済ませ、シュミレーションもしてあった。だから、気合を入れて出かたのだけれど。

今週の木曜日は夫の3か月ぶりの定期受診日だった。その日もやはり雨の予報で、予報通り雨が降った。この日ばかりは薬を処方してもらわなければならないので、いくら雨が降っていても行かなくてはならないのだ。急性期病院の駐車場は屋根がないけれど、乗降するだけなら少し軒が出ているところを使うことができる。「あそこで夫を降ろし、待合室で待っていてもらい、私が車を駐車場に止めに行こう」そう思い、シュミレーションをしていた。大した雨でなかったのが救いで、やっぱり気合を入れて受診に出かけた。

 

私は車いすの夫と出かける時、お天気とトイレと駐車場のことばかり気にしている。

それなのに、あの電動車いすに乗った女性は暑い日も寒い日も、雨の日だって仕事に出かけていたのだ。それを思うと、自分がいかに甘えているのかと思えてくる。

ネットで「車いすの旅、達人の旅支度のコツ」というのを読んだことがある。そこには「雨降りの中、車いすで楽しく進む方法」という項目があり、「もし雨が怖くなくなったらどこへでも出て行けると思う」という言葉があった。ちょっとした雨ならフード付の普通のジャンバーを着て、膝が濡れないようにビニールの風呂敷を使っているという方。携帯用の雨合羽は真四角のビニール風呂敷風のものを使っていると。スポーツ用品店で売っているビニールポンチョを使っている人もいた。それぞれがいろんな工夫をして旅を楽しんでいるのだ。

 

私は夫と一緒でなければ旅行に行くことはできない。だから夫と一緒に出かけたいと思っている。

だけど、雨もトイレも駐車場も心配でたまらないのだ。

だから私は「雨が怖くなくなった」などという境地にはとてもなれそうもない。きっと、これから先もずっと、そんな境地にはなれないだろうと思っている。