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えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

ゆっくりだけど一歩前進

我家は夫が中学生の時に新築したという、築50年の小さな家だ。

今は、居間と食堂と台所を兼ねた広いLDKという空間があるのが当たり前の時代だけれど、当時は個室指向の時代。独立した台所に、それ以前のような襖を開ければ二部屋三部屋がつながる通し間はなく、細切れの小さな独立した個室がいくつかあるのだ。

我家もその時代の流れに乗ったそんな家だ。そして、建坪が小さいせいか、各部屋の入り口はドアのところが何か所かある。間口が一間、あるいは二間ある縁側に面した部屋は型ガラスをはめ込んだガラス障子。ガラス障子のところはもちろん敷居だ。

 

夫が回復期リハビリ病院の退院を控えた頃、夫が担当のPT(理学療法士)とOT(作業療法士)と一緒に我家に外出してきた。家を確認することで退院後の生活を一緒に考えるためだ。

玄関の広さは180㌢×180㌢。高さ15㌢の上り框があり、そこからまた13㌢上がったところが床になる。車いすの夫はもちろん上がれない。その時はみんなで車いすに乗った夫を車いすごと提げて家の中に上げた。退院後はスロープを考えることにして。

 

我家は、車いすではとても生活し辛い家だった。敷居も介助なしでは通ることができない。そして、その介助には力も要った。たかが1時間ぐらいしか家にいなかったにもかかわらず、私の体は壊れそうだった。で、介護保険制度の住宅改修費補助制度を利用しリフォームすることにした。もちろん補助金だけでは到底足りるものではなかったけれど。

リフォームは寝室にする部屋を畳からフローリングにした。そして、ガラス障子を外し、アコーディオンカーテンにした。そうすることで敷居を外し、できるだけフラットに近づけた。どうしても中廊下との境目は0.5㌢ほどの段差ができてしまったことと、1か所だけは敷居を残さざるを得なかったけれど、大体のところは夫が一人で移動できるようにはなった。

その時、玄関から外に下りるためのスロープも大工さんが作ってくれた。そのスロープは安全のため、上り框にビスで固定し、作り付けにしてくれた。

玄関には下駄箱と外用の車いすも置かなければならない。下駄箱は幅の広いものから丈の高いものに買い替えたけれど、玄関の真ん中に位置するスロープは面積の四分の一を占めた。だから、夫にとっては必要なものだけれど、玄関はかなり狭くなってしまった。

 

夫は介助なしで立っていることも、歩くこともできない。

訪問リハビリを始めた当初はまだ右足は全く動かない状態だった。それが訓練を重ねるにつれ、筋肉の収縮が見られるようになってきた。収縮が見られるようになると、四点杖を使い、介助で歩行訓練を始めてくれた。そして、今では歩行訓練の時に5㌢ほどの板を上り下りする段差の訓練も組み入れてくれている。

最近、歩行訓練の時、夫の右足の降りだしが良くなってきたと褒めてくれた。私が介助していてもそう感じていたものだから、当初と比べたらかなり良くなってきたのだと思う。それで、玄関のスロープを取り外し段差の訓練をすることを提案してくれた。玄関は上り框15㌢。上り框から床までが13㌢ある。今までの訓練は5㌢の段差。昨年の3月には息子の家に行くために20㌢の段差訓練をしたことがあるけれど、とても続けられる状態ではなかった。

今度は15㌢と13㌢だ。夫の能力も上がっているはずだ。PTもできそうだと言ってくれている。一歩前進したのだ。で、今朝、スロープを取り外しておいた。

 

今日は訪問リハビリの日。そして、今日から玄関の上り下りの訓練が開始になった。

結果は思った以上に上手に上り下りすることができたのだ。

玄関の三和土に下りた時、私がドアを開けると、夫は外に向かって歩こうとした。PTの介助で外まで出ると、夫は顔を上げ、満面の笑顔で輝いていた。

四点杖を使い、PTの介助のもとでとは言え、車いすの生活になって初めて自分の2本の足で玄関から外に出ることができたのだ。うれしいに決まっている。

その顔を見たら、私の方がウルウルしそうだった。

あと何回か練習したら、私の介助でもスロープを使うことなく下りることができそうだ。

 

我家の表玄関は10段以上の階段がある。そこを降りると、その前は公園だ。もう少ししたら桜の花が咲くだろう。今まではスロープになっている裏口から出て、公園に行っていたけれど「玄関が下りることができれば、この階段を下りて桜を観に行けますよ」というPTの励ましに、頑張る意欲が湧いてきた。夫も同様、また満面の笑みで頷いていた。

ほんとに、ほんとにゆっくりだけれど、今日は一歩前進できたという実感を味わっている。