えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

褒められることで

今日は夫の訪問リハビリの日。担当の理学療法士(PT)はNさんだった。

Nさんは小柄で華奢な女性PT。

いつものようにバイタルサインをチェックして、関節可動域訓練を始めた。そして、腕の訓練、腹筋の訓練へと進み、動かない右足を上下に動かすように促した。

最近は右足の筋肉に収縮が入るようになったようで、掛け声をかけながら10回ほど、この運動も取り入れている。

そしてNさんは「今日はいいですね~。しっかり上がっていますよ」と、夫に声をかけてくれた。

その後、起座訓練と装具と室内用のリハビリシューズを履く訓練。そのどちらもが夫にとっては大変な作業なのだ。

最近の夫は臥床した状態から、一人で起きることが難しい。

リハビリ以外で、臥床した状態から起座位になるのは、朝起きた時、お昼寝から目覚めた時、夜中に尿意をもよおした時。どの時も早く起きないと失禁してしまいそうな時ばかり。それで、私が手出ししてしまうから、自立ができないのかもしれない。だけど、分かっていても、失禁させるわけにはいかないと思い、ついつい手伝ってしまうのだ。

装具は短下肢装具だけれど、金属支柱だから重い。左手だけで装着するのはかなり大変な作業になる。私も右半身が使えないものとして、試してみることがあるから、その大変さはよく分かる。その上、夫には高次脳機能障害もあるから尚更のことだと思っている。

それが、今日はどちらも上手にできたのだ。

そこでも、Nさんは上手に夫を褒めてくれた。

その後は歩行訓練をして、リハビリは終了する。

4点杖を使って全介助で縁側を往復している。途中、15㌢ぐらいの段を一段だけ昇り降りし、隣の部屋に入る。そして、向きを変え、またその段を昇り降りし、縁側に戻り、ベッドまで歩くのだ。

Nさんはとにかく小柄で華奢な体型。70㎏弱の夫を全介助で歩行訓練するのは大変なことだと思う。もちろん、Nさんはリハビリのプロだから、知識も技術もあることは分かっているけれど。

今日はその歩行訓練のあとも「今日は足がよく上がっていてよかったですよ」と、夫を褒めてくれた。

夫は思うように歩行できなかった時、リハビリのあと項垂れて暗い顔をすることがある。そんな時「なんでだろう・・・」とか「こんなはずじゃあないのに・・・」と、夫が言いたげで、私はそんな顔を見ると、悲しそうにも、悔しそうにも、感じてしまうのだ。

だけど、今日は何回も褒めてもらえた。特に、最後に褒めてもらった後、夫はニコッと嬉しそうな笑顔を見せた。

リハビリでは、けなされたり、叱られたり、怒られたりすることは絶対にない。いつも最後は「ここは良かったですよ」と言ってくれる。

人間は例え歯の浮いたような褒め言葉でも、褒められると悪い気はしない。

今日は自分でもよかったと思ったことを褒めてもらえ、嬉しかったのだと思う。私だって嬉しかったのだから。

褒められたからできたわけではなく、できたから褒めてもらえたのだけれど、夫は多分褒められた方が伸びるタイプ。多分だけど・・・

だけど、もしも褒められることで嬉しくなって、できることが増えるのならば、今日は、もっともっと褒めてみようかと思ってしまった。そんなにうまくいくわけはないことは分かっているけれど。