泣いても、笑っても、片付いてないからとどんなに足掻いても、明日の夕方になれば長男家族が帰省する。
「まあ、これが私の姿だ。これで良し」と、ついに諦める時が来た。息子たちも「母さん、汚い・・・」とは言わないだろうし。
今までだって、片付けがどんなに行き届いてなくても、私自身が平気な顔をしてきた。そして、彼女には毎回モノのありかを伝え、冷蔵庫も引出しも押し入れも、どこを開けても構わないと言い続けている。だから「このくらいで構わないさ。どうせ、孫たちが走り回るのだから。気楽に走り回れるぐらいがちょうどいい」と、やっぱり開き直った。
30代半ばの頃、初めてのパート先でSさんと知り合った。
Sさんは私より少し年下で、パート先には看護師が2人しかいないこともあり、私たちはすぐに仲良くなった。そして、時々「家においでよ」と誘ってくれるようになった。
Sさんの家に行くと、いつも部屋には荷物が散乱していた。
彼女は模様替えが大好きで、毎月のように模様替えをしているという。先月のそれが片付かないうちにまた模様替えをする。だから、いつもそんな状態らしかった。
それでも「散らかっているけど、どうぞ、どうぞ・・・」と部屋に案内してくれた。
そして、流しには洗ってない茶碗や湯飲みやお皿が山のようにあり、その中から湯呑を探し、それを洗ってお茶を入れてくれるのだ。
テレビで見るゴミ屋敷とは違う。片づけしたくてし始めるけど、片付かないうちにまた始めるだけだから。
だけど、正直初めはびっくりした。そんなに散らかっているのに「上がって、上がって・・・」と言ってくれるのだから。自分にはない大らかさに驚きもした。そして、いつだってにこやかに迎え入れてくれる彼女のことがますます好きになった。
彼女と会ってから、自分も人を迎え入れる時の気持ちが少し変わったような気がした。突然の訪問であっても、どんな時にも「どうぞ、どうぞ・・・」と言えるようになったから。もちろん、誰彼という訳ではないけれど。
実は今日も悪あがきをしながら片づけをしていた。
最低限の夫のことは何をおいてもするのだけれど、あとは気配を感じながら違う部屋に籠りきりで。
すると、今日は「おう、おう」と呼んでばかり。トイレでもないし、用はないと思うのに。「寂しいの? 退屈なの?」と聞きながら、「総監督をしてちょうだい」と同じ部屋で過ごすようにした。
それで、もう片づけは諦めることにした。
Sさんでいけばいいことだから。それより、自分のことができなくなってしまった夫のことをすることの方が今の私にとっては大事なこと。
♪ ♪ あんたが一番 わたしが二番
ハ~! ドン!! ドン!! ♪ ♪
なんて、こんな歌を思い出しちゃった。夫に歌って見せたら声を出して笑っていた。
明日は通常の掃除だけはするつもりだけど、あんたが一番には変わりないから。
ハ~! ドン!! ドン!!