えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

こうして年をとっていくのだろう

三連休なか日の今朝、窓から外を眺めながら「さて、今日は何をして過ごそうか」と考えていた。

外は青空が広がり、お日さまも出ていて思ったよりも暖かそう。だけど、連休ではどこかに行く気がしない。「なら、散歩にでも・・・」と思いながら、洗濯物を干しに一歩庭先に出ると、そこはやっぱり冬。冷たい風が頬に容赦なく吹きつけてきた。

歩けない夫にとって、寒さは私が感じるよりもずっと厳しい。暖房の中にいても気の毒なほど手足は冷たくなり、温かそうなひざ掛けを掛けていても、右手は硬直してくるぐらいだから。

「まあ、無理に散歩に連れ出すこともないか」と、今日は家で過ごすことにした。

 

夫が倒れてから、我家の生活はガラッと変わった。

暑くても寒くても、自営業の傍ら時間を見つけては庭仕事に精を出していた夫は、休みの日には「ここに行こう」とか「あそこに行こう」と私を誘い、平日には私が仕事から帰るのを待ち「散歩に行こう」と誘い、とにかく体を動かしていた。

だけど、今は車いすの生活になり、介助なしでは立っていることさえできない。そして、自分からどうしたいかという意思表示もできなくなってしまった。私が提案して聞けば頷いて答えることはできるけれど。

私の方は看護師として働いていたけれど、夫の退院と同時に退職したので、今は夫の介護が中心の生活になった。

そして、それまでは、夫の誘いにはいつだって「え~。家にいた方がいい」と言い、引っ張られるように出かけていたけれど、今では夫を連れだすことばかりを考えるようになった。

とはいえ、寒いから、暑いから、お通じが出てないからと、思うようには連れ出せないでいるけれど。

 

家で過ごすと決めた今日、一連の朝の仕事を終えてから、窓の外をぼ~と眺めている夫に「髪を洗おうか?」と言ってみた。洗髪は夫が喜ぶと分かっていることだから。夫はにこっと笑い、すぐに首を縦に頷いた。

洗髪する時には洗顔も手浴も同時にすることにしている。終った後には保湿剤を塗り、育毛剤で髪のお手入れも忘れずにして、ハンドクリームを塗り、至れり尽くせりにしても30分もあれば済んでしまう。

 

テレビというものを殆ど見ない夫はまた窓から外の景色を眺め始めた。話せない夫と私の二人しかいない我家は音もなく、静かすぎるぐらい静かだ。

「CDでもかけようか? それともラジオにする?」と夫に聞きながら、何だか音楽だけでなく人が話す声が聞きたくなった私は夫の返事を確認しないままラジオをかけた。

日曜日にラジオをかけることなんて滅多にないこと。そこからは懐かしい音楽が流れてきた。イルカのなごり雪海援隊の思えば遠くに来たもんだ、南こうせつの妹よ・・・と。

私は新聞を片手に音楽を聞き、その曲を口ずさみながら、その時代のことを懐かしく思い出していた。そして、同級生でもある夫に話しかけると、夫はお日さまの光を浴びながら、ウトウトと眠っていた。朝遅く起きたにもかかわらず、しかもまだ午前中だというのに・・・

そんな夫の姿を見ていたら、こうしてゆったりとした時が流れ、徐々に年をとっていくのだろうと思った。いや、あっという間にかも知れない。