このところ、夫が家にいる日はどこに出かけるでもなく、家でのんびりと過ごしていた。
これは暑さのせいばかりではなく、年のせいかもしれないし、元々の性格からきているのかも知れない。とにかく、出かけたいと思う気持ちがなくなってしまったのだ。
それでも、心の中では「まあいいっか・・・」と思う気持ちと、私が出かけようと思わなければ夫はどこにも行けないのだから「頑張ってどこかに連れ出さなくっちゃ・・・」と思う気持ちが葛藤し続けていた。
まだこんな気持ちになる前、夫と一緒に行こうと思っていたところが2つあった。もちろん、夫も行きたいと意思表示していた所だ。
その一つが地元美術館で開催中の『安野光雅「旅の絵本」の世界展』だ。
会期は7月12日(土)~8月17日(日) 夫が元気だった頃なら何も考えずにすぐに飛んで行くだろうけれど、今はいつ行こうかとイヤというほど悩み、考えてしまうのだ。
まずはお天気であること。トイレ事情に曜日に時間に・・・
土・日は講演会やらギャラリートークやらで、毎週のように行事が組まれている。いくら地方都市の展覧会でも込み合うに違いない。7月20日を過ぎれば夏休みに入り、平日でも賑わうかもしれない。開催直後も混むだろう・・・等などと。開催するに当たっては、多くの人でにぎわった方が良いに決まっているのだけれど、私は自分のことばかり考え、なるべく混まない日に行きたいと思うのだ。
それで、「行くなら今日しかない」と思い、夫を誘い、二人で観に行ってきた。
美術館に着くと、入口前の広場に観光バスが止まっていた。観光バスまで来ているのかと思いながら中に入ると、それほど混んでいなかったので、これならいい流れで観ることができるとホッとした。
それも束の間で小学生がどやどやと入ってきた。「こんな機会は滅多にないことだから、学校からも見学に来るんだ。それもいいことだ・・・」と思いながら、子どもたちを眺めていた。
子どもたちはクリップボードを持って、ところどころで数人ずつ固まって絵を眺めていた。先生らしき人もいて、子どもたちはおしゃべりをするわけでもなく、お行儀が悪いわけでもなかったのだけれど、シャカシャカと耳障りな音がしてうるさかった。
私は迷惑そうな顔でもしていたのだろうか、係の人が「絵を観てクイズをしているものですから申し訳ありません」と詫びてきた。私は子どもたちが固まって絵を観ていることが迷惑だったわけではなく、音の正体は何だろうと見ていただけなのだ。
初めイヤホンで説明を聞いているのかと思った。だけど違った。シャカシャカというその音は子どもたちが肩から掛けていた水筒から聞こえてきたのだ。水筒の中には氷が入っているのだろう。その氷がぶつかり合う音だった。子どもたちが歩くたびに10人以上の水筒から聞こえるのだからうるさいわけだ。
ま、子どもたちはすぐにどこかに行ってしまったので、私たちは静かに絵を観ることができたのだけれど。
「旅の絵本」の絵は、去年東京で観た「御所の花展」とは違い、安野光雅さんらしい絵だった。
私は安野光雅さんの絵の中では、旅のスケッチや津和野の景色を描いた水彩画が好きだ。だけど、今回の絵も御所の花の絵も淡い色調の絵なので、とっても優しい雰囲気が漂っていて私はどれもが好きなのだ。
パンフレットには「パノラマのように展開する風景の中に、名画・文学・歴史・映画の場面など、遊び心ある仕掛けが散りばめられ、見るたびに新たな発見があります」とあるけれど、いろんな国を巡る文字のない絵本の中に「みにくいアヒルの子」が描かれてあったり、マリリンモンローがいたりと、なかなか面白く、見応えがあった。
久しぶりに美術館に行き、刺激を受けてくると、たまには外出しようという気になってくる。
暑い、寒い、面倒だなどと思わずに、体力があるうちはやっぱり計画的に外出することも考えようと思い直した。