夫が倒れてもう少ししたら9年目に入る。
それまで、二人とも電車に乗って旅をするのが好きだった。だけど、今は旅どころか、電車にさえ殆ど乗ることはなくなった。
車いす生活になった夫と二人で乗ったのは東京、横浜、静岡、名古屋へと行った4回だけ。私ひとりでは、のっぴきならない用事で出かけた浜松と名古屋への2回だけ。
出かけられないけれど、電車に乗って出かける計画だけはいつも練っている。どこまでだったら行けるだろうか、東海道線で東に行くならここまで、西ならここまでなら大丈夫だ、とか、飯田線なら・・・、天浜線で掛川まで行き、帰りは新幹線で戻ってくるのはどうだろうか、それとも、ここの駅で降りて、こんな風に回ってみようか・・・等など。
今日は夫が倒れて初めて、迷いに迷い、悩みに悩んだけれど、自分だけの楽しみのために電車に乗って出かけることにした。
行先は名古屋。目的は旅ではないけれど、JR高島屋で開催中の「与勇輝展」
与勇輝さんのことを知ったのは、30年以上も前のこと。徹子の部屋に出演されていた与さんの話を聞き、作られた人形を見て、月並みだけれど、すごい人だと思った。そして、実際に人形を見てみたいと思った。
今回、展覧会のことを知ったのは 21日のこと。息子たちが帰った日だ。翌日は疲れ果てていたし、片付けもしたかった。そうなると、最終日の今日しか行ける日はなかった。
夫がデイケアに出かけるのは8時40分か、50分ぐらい。それから車ででかけ、駅横の駐車場に車を止めれば9時57分のひかりには乗れるはず。(実際には楽々とその前の9時41分発のこだまに乗れた)名古屋には10時30分には到着する。
帰りは13時59分に乗れば豊橋には14時30分には到着する。最悪14時59分(豊橋15時30分着)までなら大丈夫だ。(実際には早々と12時59分発に乗り、13時30分には到着した)予定通りだとしても名古屋での滞在時間は3時間半はある。展覧会を見て、お昼を食べて、欲しいものはないけれど東急ハンズだってゆっくり見て回れる。
展覧会場に着くと長蛇の列にまず驚いた。最終日だし、すんなりと入れるものだと思っていただけに本当にびっくりした。そういえば、夫と東京の三越へ安野光雅さんの絵を観に行った時も並んでいたことを思い出した。だけど、今回はその時以上の人の列だった。
与さんの人形はチケットを見てもわかると思うけれど、本当にリアルだ。大きさは私の肘から指先ぐらいだろうか、いや、もっと小さいかもしれない。それらの人形にはまるで魂が宿っているかのような気がするし、今にも話したり動いたりしそうだ。そして、あっという間にそれぞれの人形の世界に引き込まれていく。「布の彫刻だ」とか「芸術作品だ」と言われているけれど、私もその通りだと思うし、本当にすごいの一言だった。語彙が乏しくて、そんな表現しかできないことが残念でならない。
図録を買うつもりでいたけれど、やっぱり写真ではつまらない。作品は脳裏に焼き付け、買うのは大型ハガキだけにした。
上のハガキのタイトルは村の古老の話し、下はおおぞら。
女の子たち
上の左がありんこ、右はごめんください。下の左は小春、右は橋の袂。
これだけでもしばらくは楽しめそうだ。
そして、今日の出費。
新幹線のタワーズパックというお得切符、2960円(高島屋1000円分の商品券付き。これは昼食代に充てた)、展覧会の入場料800円、駐車料金1230円、計4960円也+大型ハガキ6枚分。
電車にも乗れたし、与勇輝さんの人形も見ることができたし、今日は本当に楽しい1日だった。