えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

レモンの木

40年ぐらい前のこと、同級生の弟さんが経営していた喫茶店に行くと、入り口のところにレモンの鉢植えが置いてあった。

ちょうど実のなる時期だったようで黄緑色の実が一つだけ生っていた。すごくかわいくて何だか妙に感動してしまった。で、自分もレモンの木が欲しくなって園芸店に行ったけれど、当時はレモンの苗木は置いてなかった。

 

レモンの木のことはそのまま忘れていたのだけれど、20年ぐらい前に夫と散歩していた時、ご近所の玄関横にレモンの木があることに気づいた。その当時、私の背丈より少し低いその木には5、6個の実がついていたと思う。それからそのお宅の前を通るとレモンの木を観察するようになった。レモンの木は年々大きくなり、昨年は私の背丈をはるかに超えるほど大きくなり、たわわに実をつけていた。

 

夫が倒れてからは手入れが必要な木は欲しいと思わなくなった。

それに、古くからよく知っているご近所の小母さんのお宅にも大きなレモンの木があることが分かり、おすそ分けしてくれるようになったからだ。

小母さんは今年96歳。夫が子どものころからのご近所さんでもあり、小母さんの東京に住むご長男さんと若くして亡くなった義兄が同級生。その下の娘さんと義弟が同級生ということもあり、私のことも結婚して以来ずっとかわいがってくれている。

小母さんからはいろんなものをおすそ分けしてもらっているけれど数年前まではレモンの木があることを知らなかった。

小母さんによると東京に住んでいた末の娘さんにがんが見つかり、レモンががんに効果があると聞いて植えたそうだ。だけど、実がなる前に娘さんは亡くなり間に合わなかったのだという。もう亡くなられてから15年にはなると思う。

 

もう手入れが必要な木はいらないと思っていた。だけど昨年、義姉が「地植えにしたら・・・」と鉢から外したレモンの苗木を持ってきた。言わなかったけれど、買ったもののおそらくいらなくなったのだと思われる。

何年か前まではあれほど欲しいと思っていたのに「聞いてくれればいらないと言えたのに・・・」と思ってしまった。地植えをするには大きな穴を掘らなければならないから今の私には重労働だ。それに夫がいるときにはできないし、見ると葉っぱは殆どが虫食い状態だった。

そうはいっても重いのに自転車でせっかく持ってきてくれたものをいらないから持って帰るようにとは言えない。いろいろ考えているとそれだけで何だか疲れてしまうし、こんな風に思ってしまう自分にも自己嫌悪を感じてしまった。

 

だけど、夫がデイケアの日に頑張って植えた。

 植えればしばらくはこんなに虫食いの葉っぱばかりで大丈夫かと心配しながら毎日水やりをした。

 

春になると黒っぽい新芽が出始め、それが日に日に色が変わり柔らかい黄緑色の葉っぱになってきた。そして、濃いピンク色と言うか赤紫色と言うかかわいらしい蕾がたくさんついた時にはちょっと嬉しくなった。

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そして白い花が咲いた。

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ところが数日前、新しい葉っぱが虫にたくさん食われていた。その時は探したけれど虫は見つからず、昨日まだ青虫になっていない1㎝ぐらいの黒いアゲハの幼虫を2匹見つけた。2匹だけでこんなに食べたのかと思うほど食われていたけれど、今日探しても今のところは見つかっていない。

 

調べると、レモンの実を1つ実らせるのには20枚ぐらいの葉が必要らしい。ざっと数えてみたらまだ100枚ぐらいはありそうだけれどこれ以上はアゲハの幼虫にやるわけにはいかない。2匹には気の毒だけれど遠いところに移動してもらった。

 

こうして心の中で文句を言いながらも葉っぱを眺め、虫を探し、蕾を喜び、花を愛で、実がなるのを楽しみに待っている。

いただいたレモンの木1本でこんなに楽しませてもらっているのだから心の中でとはいえ文句など言わずに義姉に感謝しなくては。

 

窓から見えるテッセン。

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剪定も何もしてやらないのに毎年楽しませてくれる。横着ものの私はこういう花が一番好きだ。