えむこの雑記帳 ~ときどきひとり言~

これは、脳出血後たくさんの後遺症が残ってしまった夫とえむこの何気ない日常生活を書き留めたものです。

懐かしいお店で

子どもたちがまだ小学校の低学年の頃、時々食べに行った鳥料理のお店がある。

そこは27歳で亡くなった夫の兄の友人のお姉さんご夫婦が経営しているお店だった。

子どもたちが成長したこともあるけれど、外食をしなくなったこともあり、もう26・7年ぐらい行っていない。

 

今日はJ子さんに誘われてデパートの名匠展に行って来た。最近はそんなことでもないとデパートに足を踏み入れることなどないので、目の保養を兼ねてお付き合いした。

J子さんは予定していた匠の箒を購入した。私は見るだけの人だから、職人さんが作っているところが見られなかったのが残念だったけれど、材料の話や作る工程の話が聞けて興味深かった。

木工細工の茶筒と茶さじも買うことにしたJ子さんの脇で、今度は茶筒を使い始める時の注意事項も聞いてきた。

2~3回分の茶殻を天日で干して、それをフライパンで乾煎りして茶筒に入れておく。そして、1日に1回、茶筒を振り、何日間だったか忘れてしまったけれど、まあ何日か置いておく。それから新しいお茶を茶筒に入れておくと、とてもおいしく飲めるとか。

あと、刃物屋さんのところでは糸きり鋏のことも教えてもらった。普通の糸きり鋏と化繊用が置いてあり、化繊用の方が上等だということ。化繊は良い鋏でないと上手く切れないからその方が値段も高いそうだ。「なるほど」と感心しながら話しを聞いた。

私はもちろん買わなかったけれど、J子さんは丁度研ぎに失敗して使えなくなったところだからと購入した。

私は全てひやかしだったけれど、薀蓄だけは頂いてきた。

 

デパートを出たのはもう13時を過ぎていた。

お腹がペコペコになった私たちはランチに行くことにしたけれど、私はそういう情報には疎いので行先はJ子さんにお任せした。

で、行ったのが、その鳥料理のお店だった。

私たちと入れ替わりにお客さんが出ていき、私たち以外はもう誰もいなかった。

何だか懐かしいなあと思っていたら、店の奥さんが私を見て「見たことがあるけれど・・・」と話しかけてきた。名前を名乗ると、奥さんもご主人も思い出してくれたのだ。26・7年前に何度か食べに行っただけなのに。夫の顔なら思い出してくれてもおかしくはないけれど、私の顔も覚えてくれていたと思うと何だか嬉しくなってきた。

当時は磯揚げや唐揚げ、照焼き等などよく食べた。子どもたちが何度もおいしい、おいしいというものだから、抹茶アイスをサービスしてくれたこともある。

今日は磯揚げランチを食べながらそんな当時のことを思い出していた。

 

デイケアから帰宅した夫にも今日のことを話した。すると、疲れた顔がすぐに綻び、にこにこしながら聞いていた。

夫も連れて行ってあげたいけれど、そこは残念ながら車いすでは無理なお店なのだ。

今度はお持ち帰りで買って帰ろう。そして、懐かしい味と懐かしい思い出を夫にも感じてもらいたいと思った。