朝夕はまだ肌寒いけれど、日中はお日さまが出ていればとっても暖かい。
そして、今日はものすごくいいお天気だった。
しかも、今日は水曜日なので夫はデイケアもなければ訪問リハビリもない。
夫にとっては休日と同じなのだ。
こんな日はいつも「どこかに誘い出さなければ・・・」と、思ってしまう。
家でのんびり過ごしてもいいと思いながらも、窓からボーっと外を眺めている夫を見ていると、それだけの人生で終わってしまいそうで、何だか寂しい気がしてしまうのだ。
で、今日も誘ってみた。
まずは「浜名湖にでも行ってみる? 花博をやってるよ」と。
夫は首を傾げ「うーん・・・」と言うだけ。気乗りしない様子がありありと伝わってきた。
「じゃあ、新城の方ではしだれ花桃がきれいに咲いてるみたいよ」と、PCの画面を見せながら誘ってみた。だけど、反応はやっぱり同じ。
あとは「東栄町はしだれ桜が満開だって。動植物園だったらミツバツツジが見頃らしいよ」と、次々に花情報を言ってみた。
それでも、返事はやっぱり「うーん・・・」と言うだけだった。
そして、最後は「ま、いいっか。どこにも行かなくても」となる。
だけど、今日は「じゃあ、近くに散歩に行こうよ。家でじっとしてるより、少しはお日さまに当った方がいいからね。それもいやなら、私は庭で草取りをするから、あなたも庭に出て総監督をしてくれる?」と言ってみた。
すると、今度はにこっと笑って頷いたのだ。
そして、夫は散歩に行く方を選択した。
散歩に行く時、コースはいつも夫に委ねている。
ま、だいたい少し行けば、どんなコースを通るのかは分かるのだけれど。
今日も予想通り、川沿いを歩くコースだった。
で、少し行ったところにあるKさんの家の前で「おー!!」と歓声が上がった。
写真はないけれど、道路沿いに植えてあるボタンがみごとに咲いていたのだ。
Kさんはもう90歳を超えたぐらいだろうか、夫が生まれる前からのご近所さんで、夫のことも私のこともとてもかわいがってくれている。
フッと玄関を見ると、戸のところに「庭にイマス」とボール紙に書いた札が掛けてあった。「何だか宮沢賢治みたい・・・」と思いながら、庭の方に目をやると、Kさんの姿が見えた。
「おばさ~ん」と声をかけると、Kさんは私たちのところまで来てくれた。そして、向かいに住む娘さんと「〇〇ちゃんたちが散歩に来ないかね」と話していたと言い、畑からサニーレタスと春菊を摘んできてくれた。
しばらく話した後、私たちは川沿いへと散歩を続けた。
川沿いを歩いていると、小さな公園の脇に1本の桜の木があった。
もう葉桜だったけれど、まだまだきれいに咲いていた。
葉桜もなかなか情緒があって良いものだと思う。
よく見ると、散ってしまった花もあるけれど、蕾もちらほら・・・
うすピンクの花は一つ一つ見ると愛らしいこと。
ぐるっと回って、約一時間の散歩だった。
ま、あとは変わりのない一日だったけれど、Kさんと会えたし、おしゃべりもできた。
爽やかな風に吹かれ、暖かい日差しも浴びた。
ボタンも桜も見たし、タンポポやカラスノエンドウなどなど、道端の草を見ながら春を楽しんだ。
そして、心身共に刺激を受ける散歩は「リハビリ何回分だろう・・・」と思いながら、家に戻った。