もう20年以上前のことだと思うけれど「詩人たちのコンサート」という番組を観た。
詩人たちが自作の詩を朗読するというもので、何人かの詩人と歌人が出演していた。
そのなかでねじめ正一さんが「あーちゃん」という詩を朗読した。遠い昔のことだから記憶が定かではないけれど、たぶん「かあさんになったあーちゃん」だったと思う。
その番組で私は初めてねじめさんの詩を聞いたのだけれど、いつの間にか詩の中に引き込まれ、聞いているうちに涙が流れてしまった。たぶん、5歳のあーちゃんになってしまったようで。それほど迫真の朗読だったのだ。
番組を観終わってすぐ、私は本屋さんに走り、ねじめ正一さんの詩集を手にした。
それからどれぐらい経ってからか忘れたけれど、今度は「詩のボクシング」という番組を観た。この時も、涙こそ流れなかったけれど、ねじめさんの詩に引き込まれた。
だから当時、詩集だけでなく何冊かの本も買い求め、読んだ記憶がある。もう、内容もすっかり忘れてしまったけれど。
あれから多分20年以上経つと思う。
もうすっかり忘れていたけれど、昨日、新聞を読んでいて久しぶりにねじめさんに会ったような気がした。
文化面に「まど・みちおさんを悼む」という追悼文が載っていたのだ。
まどさんはあまりにも有名だけれど、実は私は まどさんの詩集を読んだことがない。
「ぞうさん」は大好きな歌。手紙大好き人間の私は手紙が届くたびに口ずさんでしまう「やぎさん ゆうびん」も大好き。ごきげんな時には「ふしぎなポケット」もよく歌っている。
私は詩に造詣が深いわけではないので「すき」としか言えないけれど、
ねじめさんは、まどさんの100歳詩集『のぼりくだりの・・・』を読んで、追悼文の中にこんなことが書いてあった。
・・・平易なひらがなの詩なのに現代詩を超えていると思った。現代詩のように人間の内面や普遍的な心理は抽象的観念的な言葉でしか表現できないと思っていたが、まどさんの詩は平易なひらがなの詩なのに、きちんと人の心に届いている。・・・
中学生の頃、担任の先生から「ほんとに頭がいい人は誰にでもわかる言葉ですごく難しいことでも伝えることができるものだ 」と言われたことがある。
だれにでもわかることばで、まどさんは人間的な内面や普遍的な心理というか、世界観や宇宙観を伝えているのだろうか。
まどさんが亡くなられ、新聞でいろんな方の追悼文を読むたびに、詩集を買って私もまどさんのたくさんの詩にふれてみたいと思っている。