結婚したばかりの頃、私は家事を完璧にしたいと思っていた。というか、自分の役割だからやらなければならないと思い込んでいた。今思えばバカみたいだけど。
その頃、夫はサラリーマンだったので、帰って来る前には家はきちんと片付け、夕食の準備はもちろん、お風呂も沸かしておいた。休みの日には3食きちんと作り、手を抜くこともしなかった。と、思う。多分・・・
結婚する時に夫の希望で私は仕事を辞め、父の仕事を手伝っていたので、それができたのだと思う。
だけど、夫はそんな私を多分うっとおしく思っていたのだろう。ある時、「Kちゃんはいいな。嫁さんが里帰りするから・・・」と言ったのだ。
Kちゃんというのは、何度か書いているけれど、夫の小学校からの友人。
私は実家が近く、平日は父の仕事を手伝っていたこともあり、お盆にも正月にも泊りがけで実家に帰ることはなかった。母も結婚前に亡くなっていたし。
夫は、友人が連れ合いが里帰りし、自由に過ごしている姿を見て羨ましかったのだと思う。
私は夫がいる時にはいつだって「家のことをしなければならない」と思い、それを最優先にしてきた。その頃の私は家に縛られているような気がしていたけれど、夫の言葉を聞いて「私の方が夫を束縛し、自由を与えてなかったということ?」と、かなりショックを受けた。夫が友人と会うことだって嫌がったことはなかったのに。
それからは一緒に過ごすことも多かったけれど、私もある程度家事は手を抜き、自由に行動するようになった。今は手抜きだらけだけど・・・
夫が倒れてから、私はまた夫を束縛する日々を送っているのかも知れない。 夫は不自由になり、介護が必要になってしまったから仕方がないかもしれないけれど。
今日は水曜日で我家は何の予定もない日。だから、一日中びっしりと夫を束縛していた。
この間、S子ちゃんから信州りんごとキウイをたくさんいただいたので、まずはその絵を描いて貰うことから。
夫が絵を描くためには、私が傍にいなければできない。
机の上に白い紙を敷き、墨を磨る。
高次脳機能障害が残った夫は道具を以前のように使いこなせないから、ハガキを準備し、筆を持たせ、墨を付けるようにように声を掛けたり・・・
絵の具で着彩する時も同じ。いちいち、うるさい、うるさい。傍らでずっと世話を焼いていたのだから。
夫は以前から怒る人ではなかったけれど、苦笑いしながら描いていた。
墨で描いては、気に入らず破り。また、ハガキをセット。また描いては気に入らずに破る。そして、また・・・
そんなことを昼寝を挟んで、1日中やっていた。
よそ様が見たら「仲良くていいですね」なんて言われそうだけど、自分でも「うるさいかも・・・」と思ったら、結婚した当時言われた言葉を思い出してしまった。
今度は一人でも描けるように、硯や水彩絵の具、水鉢、筆などを全て準備し、ハガキは動かないようにセットして隣の部屋で過ごそうかと思う。
ずっと束縛されていると思われるのも嫌だから・・・
これは以前夫が描いたもの。
カラーコピーしてあったものをスキャンしてみた。原画ではないので、あんまりよくはないけれど「このくらいまで描けるようになるといいなあ」と思う。